臨床工学技士主任より
臨床現場で患者様が安心安全に透析治療に専念できる環境を提供することを最優先事項に、医療機器の保守点検・管理に取り組んでいます。
水質管理において、透析液清浄化は患者様のQOL(生活の質)向上、生命予後や合併症軽減予防の為に水質管理に力をいれています。
日進月歩していく透析医療を敏感に吸収し、より質の高い医療を提供する為、合併症対策にも積極的に取り組み、医師・看護師・他のスタッフ、又患者さまとも良好なコミュニケ―ションを保ちながら患者様が安心して治療を受けることができるよう日々努力しています。
血液浄化療法
当院では血液浄化療法(人工透析)を行っています。 血液浄化療法とは、何らかの原因により機能が低下してしまった腎臓を代替する治療法です。血液浄化療法には様々な種類があり、当院では血液透析(HD)、オンライン血液透析濾過(オンラインHDF)、オフライン血液透析濾過(オフラインHDF)、間歇的血液透析濾過(IHDF)の4種類を行っています。
透析の原理は血液がダイアライザ(人工腎臓)を通る事で、老廃物や水分の除去が行われます。血液と透析液が直接接触することはなく、ダイアライザの中の膜を介し拡散、限外濾過という現象を利用して血液中の不要な物質の除去と必要な物質の補充が行われています。 拡散は2つの溶液中の同じ物質が濃度の高い方から低い方へ移動していく現象です。分子量の小さい物質の除去に優れており、主にHDに用いられます。限外濾過は圧力をかけることで物質が圧力の高い方から低い方へ移動していく現象です。分子量の大きい物質の除去に優れており、主にHDF、IHDFに用いられます。
オンラインHDFは治療中の血液回路に透析液を補充液として用いることで血圧低下を防ぎやすい、拡散と限外濾過の両方を用いるためHDに比べて物質除去能が高いといったメリットがありますが、体内に直接透析液が入るため基準を満たした清浄化された透析液を管理する必要があります。オフラインHDFでは透析液ではなく専用の補充液を用いて行います。
IHDFはあらかじめ設定した時間15分~30分間隔に透析液を一定量ずつ補液し血圧の変動を安定させます。主に血圧が低下しやすい患者様に対して行います。
アフェレシス業務
LDL吸着
LDLは、動脈硬化の原因になる悪玉コレステロールの代表的成分です。LDLアフェレーシスとは、血液を体内から体外へ出し、血球成分と血漿成分を分離したのち、血漿成分に含まれるプラスに荷電したLDLコレステロールを、マイナスに荷電したビーズに吸着させることで取り除いた後、再び体内に戻す治療法です。もともとLDLを取り除くことを目的に開発された治療法ですが、LDLのほかにも、プラスに荷電した炎症を悪化させる物質や血液を固まらせる物質、血管を収縮させる物質、血管から蛋白がしみ出やすくなる物質などを吸着し取り除くことができます。
レオカーナ(吸着型血液浄化器)
LDL及びフィブリノーゲンの吸着による血液レオロジーの改善により、閉塞性動脈硬化症患者様の末梢血液循環の改善を導き難治性潰瘍を治療することを目的に使用します。
適応としては
- フォンテイン分類Ⅳ度の症状を呈する者
- 膝窩動脈以下の閉塞又は広範な閉塞部位を有する等外科的治療又は血管内治療が困難で、かつ従来の薬物療法では十分な効果を得られない者
透析液清浄化
透析治療をおこなうには大量の透析液が必要です。一回の治療に必要な透析液は、一人あたりおよそ120Lです。透析施設では、治療に使用できる質の高い透析液を水から作る必要があります。当院の場合、透析用の水は水道水から作っていますが、水道水には塩素や不純物質が含まれており、そのまま透析に使用できません。特に水道水の中に含まれる菌やそれらの成分は、体内に侵入すると発熱や血圧低下など様々な炎症反応を引き起こすため、透析液は患者様に届けるまで、きれいな状態でなければなりません。
RO装置(MXE752PC-M)は、透析に使用する水RO水)を水道水から作ります。RO水供給配管は次亜塩素酸ナトリウムで消毒しています。
透析用製剤溶解装置(DAD-70Si)は、密閉回路内で薬剤を溶解し透析液原液を作っているため、薬剤の粉の飛散や外気に触れることで発生する汚染を防いでいます。そのため、透析液原液をクリーンな状態で作ることが可能です。
多人数用透析液供給装置(DAB-70Si)は、装置内の未洗浄部分が少ない新しい機種になります。
DAB-Siは、RO水と透析液原液を混ぜて透析液を作り、患者様の人工腎臓(透析監視装置)に透析液を送っています。透析液は糖分や電解質を含んでおり菌に汚染されやすいため、2種類の洗浄剤を用いて有効な消毒をおこなっています。
透析液供給配管は、KC配管とPFA配管を使用しています。PFA配管にはフッ素が多く含まれているため非粘着性が強く、粘度の高い液体でもほとんど付着しない特徴があります。そのためクリーンな状態を保つことができます。
透析監視装置にはエンドトキシン捕捉フィルターETRFが搭載されています。エンドトキシンはグラム陰性桿菌の成分の一部で、このエンドトキシンが血中に入ると命にかかわる反応が起こる可能性が高い物質です。このエンドトキシンを捕捉(カット)するフィルターがETRFです。
当院の配管(RO装置前後、透析用製剤溶解装置後、透析監視装置)にもETRFが搭載されていますが、透析液中に存在する非常に小さくETRFも簡単に通過する細菌のかけらが、炎症を引き起こす可能性が報告されています。そのため当院では、透析液製造・供給配管のどの部分の溶液からもエンドトキシンや菌が検出されないことを目標に、清浄化に注力しています。
当院のRO水、透析液原液、ETRFを通過する前の透析液(標準透析液において、エンドトキシンおよび生菌検査は、透析液水質基準達成のための手順書に基づき行い、基準値をクリアしていることを確認しています。
PTA
当院では、Dr.の介助を行うことで患者様のシャントの状況を確認しています。
シャントエコー
シャントとは、オペによって動脈と静脈をつなぎ、透析に必要な血液を取り出せるようにした血管のことをいいます。しかし、透析を重ねていくとシャントにさまざまな変化が起きる場合があり、透析中にトラブルを生じることがあります。合併症としては血管が細くなる狭窄、その他に手指や腕の腫れ、瘤、感染などがあります。これら合併症の状態やトラブルの原因を調べるための検査として超音波診断装置を使ってのシャントエコー検査があります。
当院ではシャントトラブルの疑いがある患者様、もしくはすでにトラブルがある患者様を対象に、臨床工学技士がシャントエコーを実施しシャント管理を行っております。疑いに挙げられる症状としては、透析中の血流不足、シャント音の変化、穿刺困難、触知による血管テンションの変化などになります。検査で重要視される項目として、フローボリューム(FV)、抵抗係数(RI)、拍動係数(PI)、血管径などがあります。この4つの項目を総合評価し、シャントトラブルがないかを判断しております。
エコー下穿刺
現在、穿刺業務におきましてエコーを用いた穿刺を導入しております。エコー下穿刺により、血管径、深さ、位置、血管内部を確認しながら、リアルタイムで穿刺を行うことが出来るため、穿刺困難な患者様へのスムーズな穿刺が可能となります。当院では、穿刺に難渋される患者様に対し積極的にエコーを用い、最適な場所に穿刺することを心掛けております。また当院独自のエコー下穿刺プログラムを用いて初級、中級、上級の段階に分け、エコー下穿刺を丁寧に教えています。
当院ではエコー下穿刺におきましてハンディタイプエコー、スタンドタイプエコー、ノートパソコン型エコーで行っています。
医療機器保守管理業務
当院で使用している主な医療機器
透析関連機器:DCS-27 DCG-03 DCS-100NX DBB-27 DBB-100NX、逆浸透水処理装置(MXE752PC-M・MIE-752QH1)、多人数用供給装置(DAB-70Si・DAB-50NX)、溶解装置(DAD-70Si・DAD-40NX)
輸液ポンプ、シリンジポンプ、超音波診断装置、AED、モニター、心電計、酸素飽和度計、酸素流量計、吸引器、パルスオキシメータ、滅菌機器、光学顕微鏡、尿科学分析装置、小型卓上遠心機、一酸化炭素ガス分析装置、全自動尿流量計、軟性膀胱尿道鏡、浸透圧計、血液ガス分析装置など。
現在臨床工学技士10 名 串木野・川内 で業務を行っています。
取得認定
- 透析技術認定士
- ME2 種技術認定士
- 認定血液浄化臨床工学技士
- 高気圧技術認定士
- 透析技能検定2級
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 血液浄化専門臨床工学技士
- 呼吸治療専門臨床工学技士
所属学会
- 鹿児島県臨床工学技士会
- 日本臨床工学技士連盟
- 日本臨床工学技士会
- 日本血液浄化技術学会
- 日本医療機器学会
- 一般社団法人透析バスキュラーアクセスインターベンション治療医学会
- 日本透析医学会
- 日本透析アクセス医学会
日々、スキルアップのため認定資格取得を目指しております。